グレゴリオ暦/2016.02.26 UP  カテゴリー「特集/ツクヨミをさがして

ツクヨミをさがして④ 
ツクヨミのウケモチ殺しとハイヌウェレ

 

 顔面把手付深鉢土器のデザインはどこか呪術的ですが、地母神の表象だったと考えると合点がいきます。それはまさしくひとびとに恵みをもたらす「呪術」を行ってくれる存在だったのです。その呪術を成就させるために必要な「死の儀礼」を与えるのがツクヨミであり、スサノオだったということです。

 ツクヨミが「月をかぞえる」行為を神格化したものであるならば、死を与える者としての役回りは、うってつけかもしれません。

 月をかぞえるとは日々の満ち欠けを観測することにほかならないわけですが、29日半ごとに満ちては欠けを繰り返し、新月でいったん空から姿を消したあとに再びあらわれるさまに、かつてのひとびとは生命の死と再生を重ね合わせ、月には不老長寿の力があると考えていました。こうした死と生命をつかさどる存在が他者に対して死を与えるというのならば、その行為には合理性があります(スサノオのヴァージョンでは、単純に彼の暴力的な性格が殺害者の役に適していたのでしょう)。

 ウケモチやオホゲツヒメのなかに、貴重な恵みをもたらしてくれる地母神への信仰という原日本人の古層の記憶が反映されているのだとすれば、ツクヨミにも生と死をつかさどる月神に対する信仰という原日本人の記憶が映されていると考えても無理はありません。

 意図的に無視されているのか、『古事記』にも『日本書紀』にもツクヨミのそうした部分はまったく触れられていませんが、当時の朝廷があったと思われる近畿ではなく、ほかの土地の風土記から拾ったのであろう、ツクヨミのウケモチ殺しを描いた『日本書紀』別伝の食物起源神話のなかにだけ、その片鱗を垣間見ることができるのかもしれません。このあたりについては機会を改めて、もう一度みてみる必要がありそうです。

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