グレゴリオ暦/2016.02.26 UP  カテゴリー「特集/ツクヨミをさがして

ツクヨミをさがして④ 
ツクヨミのウケモチ殺しとハイヌウェレ

 原古の祖先たちのあいだに、ハイヌウェレという名の不思議な乙女がいて、大便としてさまざまな種類の貴重な宝物を出すことができた。あるとき祖先たちが、マロという踊りを催すと、ハイヌウェレは毎夜その踊りの真ん中にいて、踊り手と見物人たちみんなに身体中から出した宝物を与えた。彼女がみんなに与える宝物は、一晩ごとに種類が違っていて、前の晩に与えた宝よりいっそう高価なものになっていた。そこで祖先たちは、こんな不思議な力を持っているハイヌウェレのことが、だんだん妬ましくなって、ついに最後の踊りの晩に彼女を、あらかじめ掘っておいた深い穴の中に投げこみ、土をかけた上を踊りながら踏み固めて、生き埋めにして惨殺した。

 朝になってこのことを知った、ハイヌウェレの父親のアメタは、祖先たちの所業に対して憤慨しながら、娘の埋められた場所を探し、見つけるとそこから死体を掘り出した。それから彼は、その娘の亡骸を多くの断片に切り刻んで、その一つ一つを別々の場所に分けて埋めた。するとそのハイヌウェレの死体の断片は、やがて一つ一つがそれぞれ種類の違う芋に変わって、このときから人間はこれらの芋を栽培し、それを主食物にして生きることができるようになった。

(吉田敦彦 著『縄文の神話』P117/青土社/1997)

 ハイヌウェレは尻から貴重な宝物を無尽蔵に出すことができるという点で、非常に特殊な能力をもった存在であり、人間というより女神といえるでしょう。この女神は結局、惨殺されてしまうわけですが、彼女の死骸の断片のひとつひとつは食物に変わり、それらが人間の主食物になったと神話は伝えています。

 この構造、すなわち、

     女神が死を与えられる
        ↓
     女神の死骸から食物や種が発生する
        ↓
     その食物がのちの人間の生きる糧になる

 という物語の根幹をなす骨組みは、日本の記紀神話が語るウケモチとオホゲツヒメの物語とまったく共通しています。これを偶然とよぶのは、いささか無理があるでしょう。ウェマーレにはまた、次のような神話も残されているとイェンゼンは記録しています。

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