グレゴリオ暦/2016.02.26 UP  カテゴリー「特集/ツクヨミをさがして

ツクヨミをさがして④ 
ツクヨミのウケモチ殺しとハイヌウェレ

 

 ツクヨミがウケモチを殺した話と役者を変えただけで、まったく同じであることがわかります。これらの物語が、ひとびとの生命の糧となる食べ物の起源を伝える目的の神話であることは、いうまでもありません。実際、オホゲツヒメの「ゲ」は「ケ」で、ウケモチの「ウケ」「ウカ」と同じく食物の意味であり、オホゲツヒメ、ウケモチはその名前からして食物をつかさどる神であることを物語っています。その意味ではツクヨミもスサノオも脇役であり、殺す役を誰がやるかはあまり重要でないのかもしれません。

 だとしてもツクヨミとスサノオのヴァージョン、ここまで内容が同じということは、どちらか一方がオリジナルということなのでしょうか。作物を栽培し、収穫していくうえで「こよみ」というものは欠かせませんから、破壊エネルギーの権化のようなスサノオよりもツクヨミのほうが食物紀元神話の登場人物としては正統な気もします。

 ところが、どうやらそのオリジナルは『古事記』でも『日本書紀』でもなく、もっと別のところにあるらしいことがわかりました。神話学者の吉田敦彦が著した『縄文の神話』によると、食物の起源を”殺された神のからだからの生成”に求める神話はおもに熱帯の原住民たちのあいだに広く残されているようで、これを発見したドイツの民俗学者アーノルド・イェンゼンは、このタイプの神話を「ハイヌウェレ型神話」と名づけてます。

 「ハイヌウェレ」というのは、この型の神話の典型例とされているインドネシアはモルッカ諸島セラム島の原住民ウェマーレ族に伝わる食物紀元神話の主人公の名前。ハイヌウェレ型神話が残されているのは熱帯の、とりわけバナナや椰子などの果実とともにヤムイモ、タロイモなどのイモ類をより原始的なやり方で栽培して生活している民族のあいだで顕著だそうで、ウェマーレはその代表格です。『縄文の神話』ではイェンゼンの採集したウェマーレの神話を次のように紹介しています。

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