グレゴリオ暦/2013.08.07 UP カテゴリー「特集/ツクヨミをさがして」
ツクヨミをさがして②
『古事記』『日本書紀』に隠された古代呪術 陰陽五行
さらに『古事記』では本文がスタートする前に置かれた太安万侶(おおのやすまろ)による序文に、こうあります。
【日本書紀 原文】
臣安萬侶言。夫、混元既凝、氣象未效。無名無爲。誰知其形。然、乾坤初分、參神作造化之首、陰陽斯開、二靈爲群品之祖。
【日本書紀 現代語訳】
臣安万侶が申し上げます。
そもそも混沌とした万物の根元がすでに固まっていたとしても、ものの形も性質もまだあらわれておらず、そのころのことは名づけようも仕業(しわざ)もなく、誰もその形を知るものはありませんでした。しかしながら天と地がはじめて分かれると、三柱の神(アメノミナカヌシ、タカミムスヒ、カムムスヒ)が創造のはじめとなり、陰と陽の二気が分かれると、二柱の神(イザナキ、イザナミ)が万物の祖となりました。
『古事記』もまた『日本書紀』同様に、世界がまず混沌から陰陽二気に分かれることからはじまったという前提に立っていることがよくわかりますね。
記紀神話は神道とも一体であることを考えると、その根底に陰陽五行説のロジックがどうどうと横たわっている事実はやはり見逃せません。
吉野裕子はほかにも記紀が語る神話に秘められた謎を陰陽五行の法則によって解き明かし、上記以外にも日本文化やその基底にある神話の中には陰陽五行説の呪術が予想以上に広く浸透していることを論証しています。
だとすれば、これからさらに見ていくツクヨミやその周辺にも同じことがいえる可能性は高く、そうしたなかから原日本的な風景や真理を探り出すには、道教や陰陽五行のベールを取り除いて考える必要があることはおぼえておいたほうがよさそうです。