こよみとはそもそも天体の動きを観測、計算することから発生しているが、夜空を覆う天体のなかでもひときわ大きく目立ち、計測しやすいのが月と太陽だ。したがって古今東西、多くのこよみは月または太陽の運行を基準にしてできあがっている。
月の満ち欠けにもとづいたこよみが太陰暦(陰暦)、太陽の周期にもとづいたこよみが太陽暦(陽暦)。現在、私たちが日常的に使用しているいわゆる新暦は正確には「グレゴリオ暦」とよばれるが、これは太陽暦だ。
一方、和暦は月の朔望周期が基準なので太陰暦にあたるが、純粋な太陰暦とは異なり、正しくは太陰太陽暦というこよみになる。
太陰暦と太陽暦とのズレを 補正した太陰太陽暦
太陰暦のひと月の長さは月の満ち欠けひとめぐり=約二十九・五日。つまり太陰暦の一年は、
二十九・五×十二=三五四
となり、太陽暦の一年=三六五日より十一日ほど少ない。
太陽暦の一年は四季のひとめぐりでもあるから、太陰暦では季節に対して毎年十一日ずつ、こよみが前倒しになっていくことになる。つまり、そのまま進行していくと、やがて一月一日が夏の暑い盛りに訪れるなんてことも起こるわけだ。
四季の変化が明瞭な日本では、これでは少々使いづらいだろう。とりわけ農耕においては、たとえば田植えの時期を、毎年十一日ずつ誤差を計算して行わなければならず、好ましくない。
そこで月日のめぐりには月のこよみを使ったまま、四季をさらに細かく二十四の段階に分類した「二十四節気」や、約三年に一度、一年を十三か月とすることで太陽暦との誤差を補正する「閏月(うるうづき)」という仕組みを導入することで、太陰暦を季節の周期にも対応させる方法が整えられた。これが太陰太陽暦である。
月と太陽の周期を調和させた混成暦ともいえる太陰太陽暦だが、その心臓部はあくまでも太陰暦のほう。したがって太陰太陽暦は陰暦のひとつとみなされる。