和暦を知る

和風月名②   
睦月から師走まで、それぞれの由来

 
和 風 月 名 由  来
睦月
むつき
(一月)
正月に家族や親族一同が仲良くそろって過ごすことから「相睦び月(あいむつびつき)」が語源と考えられているが、稲の実を初めて水に浸す月という意の「実月(むつき)」から転じたとも。また一年の最初の月ということで「元(もと)つ月」とする説もある。
如月
きさらぎ
(二月)
草木が萌え出づる「萌揺月(きさゆらぎづき)」「草木張月(くさきはりづき)」の略とする説のほか、「陽気が更に来る」説や、まだ肌寒い季節なので「衣更着」とする説なども。有力な説はない。
弥生
やよい
(三月)
異説はほぼ見られず、「いやおひ」説が有力。ただしこれには水に浸した稲の実が「いよいよ」生え伸びるという意と、草木が「いよいよ」生い茂るという意の二説が唱えられている。
卯月
うづき
(四月)
卯の花の咲く時期の意とされるが、稲種を植える月の意の「植月(うづき)」とする説、また「苗植月(なえうえづき)」から転じたとする説も。なお「卯」が十二支の四番目であるから四月=卯月とする説は誤り。陰陽五行の配当で四月は「巳」にあたる。
皐月
さつき
(五月)
「早月」とも書き、早苗を植える月の意。田植えをする女性を「早乙女(さおとめ)」、田植え後の祭を「さのぼり」、田の神を「さんばい様」(西日本)とよぶなど、「さ」が田植え由来の語であることはほぼ確実で、皐月はまさに「さ」月なのだろう。ちなみに小正月(一月十五日)に豊作を祈願して田植えの動作を模擬的に行う儀礼も「さつき」という。
水無月
みなづき
(六月)
田植えが済み、田に水を注ぎ入れる月の意から「田水の月(たみのつき)」「水張月(みずはりづき)」「水月(みなづき)」説が有力。「無」は「な」の当て字であるため、五月の梅雨が過ぎて天には水が枯れて無いから、とする説はほぼ支持されていない。
文月
ふみづき
(七月)
「ふづき」とも。稲の穂が実る意の「含み月(ふくみづき)」「穂含月(ほふみづき)」説が有力。七夕に詩歌の文をそなえたことから「文月」となったとするのは後世の俗説のようである。
葉月
はづき
(八月)
稲の穂が張る意の「発月(はりづき)」「穂張り月(ほはりづき)」から転じたとする説のほか、和暦八月は秋にあたることから「葉落ち月(はおちづき)」の略とする説もあるが、定説はない。
長月
ながつき
(九月)
秋の夜長で「長月」とする説が有名だが、稲の穂が熟す刈り入れ時期の意で「稲熟月(いなあがりづき)」「稲刈月(いねかりづき)」から転じたとする説もある。
神無月
かんなづき(十月)
翌月に行われる五穀の収穫を祝う重要な神事、新嘗祭(にいなめさい)の準備として、収穫したばかりの米で新酒を醸(かも)す意の「醸成月(かみなんづき)」説が最有力。単純に「神の月」、雷シーズン終了の意の「雷なし月(かみなりなしづき)」とする説も。八百万の神が出雲に集まり、ほかの国々から神がいなくなる「神なし月」説は有名だが、「神無月」は完全な当て字と考えられ、ほぼ俗説。
霜月
しもつき
(十一月)
文字どおり霜の降る月とするのが有力。この月は宮中の新嘗祭のみならず、民間でも新穀を食す時期であることから「食物月(おしものづき)」とする説も。
師走
しわす
(十二月)
年末でみな忙しく、師匠といえども走りまわるとする説が一般に知られている一方で、「師走」は当て字とも考えられ、年が終わる意の「歳極(としはつ)」や、農事をすべて終えたという意の「万事し果つ月(ばんじしはつつき)」から転じたとする説も有力。

●参考文献/『大言海』大槻文彦著(富山房)/『日本まつりと年中行事事典』倉林正次編(桜楓社)/『年中行事大辞典』加藤友康・高杢利彦・長沢利明・山田邦明編(吉川弘文館)