和暦7月15日
お盆
お盆の行事として全国で広く行われているものに、太鼓や笛、鉦(しょう)の音、歌に合わせて老若男女が踊り、祖霊を供養する「盆踊り」があります。
盆踊りは中世に流行った、念仏を唱えながら踊る「念仏踊り」が変化していったものと解釈されることが多いですが、その起源はわかっていません。ただ、日本三大盆踊りのひとつ「郡上(ぐじょう)踊り」(岐阜県郡上市)に見られるように、かつては夜通し行われることが多かったようで、大昔は夜を徹して踊り続けることである種のトランスに入り、祖霊とのより深い交流をはかっていたのかもしれません。
本来のお盆は必ず望、すなわち満月の日であり、月は日没とともに東の空に顔を出し、夜明けまで空を明るく輝かせます(「月の出」を参照)。さらに暑い時期ということもあり、電気のない時代であっても、この日はひとびとがひと晩中安心して野外で活動できたわけです(もっとも現代においてはお盆はグレゴリオ暦で行われることが多いため、月の満ち欠けとは無縁のイベントになっているのですが……)。
◆徳島の阿波踊りも沖縄のエイサーも盆踊りのひとつ
盆踊りには中央にやぐらなどを組み、その周囲を輪になって踊る形式と、行列をなして道を練り歩く形式がありますが、後者のほうが亡者の霊を慰めてまわる盆踊り本来のスタイルに近いといわれています。
くわえて盆踊りは地方によっても多種多様で、とくに有名なものとしては前述の「郡上踊り」のほか、徳島の「阿波踊り」や秋田の「西馬音内(にしもない)の盆踊り」(以上が日本三大盆踊り)、沖縄の「エイサー」、熊本の「山鹿(やまが)灯籠踊り」などが広く知られており、いずれも古くから受け継がれる長い伝統を守るものとして、多くの観光客を集めています。
◆お盆と正月はふたつで対の魂祭(たままつり)
煤払いに相当する七夕、年神棚に相当する盆棚など、正月とお盆とを比較してみると、両者がよく似ていることがわかります。正月には年神を迎えて送り、お盆には亡くなったひとや祖先の精霊を迎えて送る。ひときわ忙しい様をよく「盆と正月が一度に来たようだ」などといいますが、お盆と正月はまさしくふたつで1セット、対であり、ともに原日本人が古くから行ってきた祖霊祭、魂祭(たままつり)だったのでしょう。
より古い時代には1月1日の朔ではなく、1月15日の望こそが本来の正月でした(小正月を参照)。お盆と正月は半年ごとの満月の日に祖霊とともに祝い、過ごすことで将来の安泰を祈り、感謝する、日本人にとって最も重要な日だったといえるのではないでしょうか。