• ●読み方● 和暦=旧暦/月の出入=東京で月の中心が地平線に重なる時刻/(二)=二十四節気/(雑)=雑節/(節)
    =節句/(年)=年中行事/G暦=グレゴリオ暦 (新暦)/データ出典…暦要綱・暦計算室(国立天文台)/※月満ち欠け図は目安です。免責事項
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  • グレゴリオ暦/2013.08.07 UP  カテゴリー「特集/ツクヨミをさがして

    ツクヨミをさがして② 
    『古事記』『日本書紀』に隠された古代呪術 陰陽五行

              

     では、ここで再び『日本書紀』に注目してみましょう。

     以下は世界のはじまりを語る『日本書紀』の「神代」の本編冒頭部分。例によって超訳ですが、なるべく原文に忠実にしてあります。


    【日本書紀(本編)】

     昔、天と地も分れず、陰と陽もまだ分かれていなかったころ、(世界は形も定まることなく)鶏の卵のように混沌としていましたが、そこにわずかにもののきざしがあらわれました。そのうち、澄んで明るいものは薄く広がって天となり、重く濁ったものは固まって地となりました
     

     この描写、さきほど引用した吉野裕子による陰陽五行の解説「この混沌に含まれている『陰陽』の二気は、やがてまず清明の『陽気』が昇って『天』となり、次に重濁の『陰気』が降って『地』となったと説く」と、とてもよく似ていると思いませんか。

     『日本書紀』本編冒頭は、さらにこう続きます。


     こまかいものは容易に動くことができ、重く濁ったものは凝り固まることがむずかしかったため、天がまずできて、のちに地が定まりました。

    (福永武彦訳『現代語訳 日本書紀』P17/河出書房新社/2005)

     実はこれとそっくり同じ描写が、前2世紀、古代中国は前漢の時代に編纂された『淮南子(えなんじ)』という書物の中に見つかっています。『淮南子』は当時の中国の思想や知識を可能な限り網羅した知の百科全書的な文献で、その巻第二「俶真(しゅくしん=はじめの真実の意)訓」および巻第二「天文訓」には、世界のはじまりを陰陽により解説しています。

     これを見てみると、なるほど、先ほどの吉野裕子による解説の一文もそれを要約したものだったことがわかります。そこで、この『淮南子(えなんじ)』なる書を私たちも開いてみることにします。なお描写の類似を比較しやすくするため、ここでは原文も掲載します。


    【俶真(しゅくしん)訓 原文】

     天地未剖陰陽未判、四時未分、萬物未生、汪然平靜、寂然清澄、莫見其形。


    【俶真訓 読み下し文】

     天地未だ剖(わ)かれず陰陽未だ判(わ)かれず、四時(しいじ)未だ分かれず、万物未だ生ぜず、汪漸(おうぜん)として平静に、寂然(せきぜん)として清澄にして、その形を見るもの莫(な)し。


    【俶真訓 現代語訳】

     天と地がまだ形作られず陰気と陽気がまだ生まれず、春夏秋冬の四季もまだ現れず、万物もまだ発生していない、その遥か以前の時、しーんと静まりかえり、ひっそり澄み渡って、いかなる物の形も全く見られないという状態である。


    (池田知久著『訳注「淮南子」』P70~74 抜粋/講談社学術文庫/2007 ※太字は筆者)

    【天文訓 原文】

     天墜未形、馮馮翼翼、洞洞灟灟、故曰太始。虛廓生宇宙、宇宙生元氣。(中略)元氣有涯垠、清陽者、薄靡而為天重濁者、滯凝而為地清妙之合専易、重濁之凝竭難、故天先成而地後定


    【天文訓 読み下し文】

     天墜(地)未だ形(あらわ)れざるとき、馮馮翼翼(ひょうひょうよくよく)、洞洞灟灟(どうどうぞくぞく)たり、故に「大始(たいし)」と曰う。(中略)虛廓(きょかく)は宇宙を生じ、宇宙は元気を生じ、元気に涯垠(がいぎん)有り。清陽なる者は、薄靡(はくび)して天と為り重濁なる者は、滯凝(たいぎょう)して地と為る清妙(せいみょう)の合専(ごうせん)するは易(やす)く、重濁の凝竭(ぎょうけつ)するは難(かた)し。故に天先ず成りて地後に定まる。


    【天文訓 現代語訳】

     天地がまだ形作られていなかった時は、ただ何かがもやもやと漂い、ふわふわ浮かんでいるだけであった。これを「大始(たいし)」(大きな始まり)と言う。(中略)やがて虛廓(カオス)から宇宙(空間と時間)が生まれ、宇宙(コスモス)から元気(万物の根源的な元素)が生まれた。そして元気の中に二つのものへの分化が現れると、清んで明るい気は、広くたなびいて天となり重く濁った気は、凝固して地となった清んで細かな気が集まることは易しく、重く濁った気が固まることは難しい。そこで、天が先にできあがり地は後で固まった。


    (池田知久著『訳注「淮南子」』P90~92 抜粋/講談社学術文庫/2007 ※太字は筆者)

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