• ●読み方● 和暦=旧暦/月の出入=東京で月の中心が地平線に重なる時刻/(二)=二十四節気/(雑)=雑節/(節)
    =節句/(年)=年中行事/G暦=グレゴリオ暦 (新暦)/データ出典…暦要綱・暦計算室(国立天文台)/※月満ち欠け図は目安です。免責事項
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  • グレゴリオ暦/2014.03.08 UP  カテゴリー「月の万葉歌

    【 月の万葉歌 】
    玉かぎる 夕さり来れば 猟人の 弓月が岳に 霞たなびく

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    日本最古の和歌集『万葉集』収録の、月を詠みこんだ歌を紹介しています(このコーナーに関する”能書き”はこちらをご覧くださいませませ)。

    ※『万葉集』収録の各歌には通し番号が振られて整理されています。歌の最後に記した数字がそれで、たとえば(3巻178)とあったら「万葉集 巻第3 178番」の歌という意味になります。


     『万葉集』に数多く収録されている柿本人麻呂の歌です。

     結びの句に登場する「霞(かすみ)」とは春霞のことで、この歌は春の雑歌に分類されます。遠くの景色が湿気による「もや」でかすんで見える現象を「霞」のほかに「霧(きり)」ともいいますよね。しかし和歌の世界では同じ現象でも春の場合を「霞」、秋の場合を「霧」というふうに、昔から使い分けているようです。

      玉かぎる 夕さり来(く)れば 猟人(さつびと)の
              弓月(ゆづき)が岳(たけ)に 霞たなびく

                                  (10巻1816)

     「玉かぎる」は「夕」にかかる枕詞。『日本古典全集 萬葉集 二』(小島憲之 木下正俊 佐竹昭広 校注・訳/小学館)によると、「玉かぎる」は夕方の淡い光を玉の放つほのかな光にたとえたのだろう、とのこと。「かぎる」は光り輝くという意味です。

     「弓月が岳」は奈良県にある山の名称で、崇神天皇陵とされる行燈山(あんどんやま)古墳(天理市柳本町)の近くにある巻向山頂上の岳といわれています。岳の形を三日月(眉月)や上弦月(弓張り月)のように緩やかに描かれた弧にたとえたのでしょうか。あるいは近くの空に浮かぶ三日月や上弦月との対比が美しい山なのかもしれません。

     歌に詠みこまれている「猟人(さつびと)の」は猟師のことですが、ここでは「弓」にかかる枕詞となります。

     ということで、この歌は”夕方になると弓月が岳に霞がたなびいている”という情景を、思い切り美しく詠んでいるんですね。ちなみに『万葉集』には、この歌の前後に同じく「霞たなびく」で結んだ柿本人麻呂による歌が3つ収録されています。参考までに以下に掲載しておきましょう。

       児(こ)らが手を 巻向山(まきむくやま)に 春されば
                     木の葉しのぎて 霞たなびく
    (10巻1815)

       今朝行きて 明日は来むと云子鹿丹
                      朝妻山に 霞たなびく
    (10巻1817)
       ※「云子鹿丹」は「云ふ子かに」「言ひし子が」などと読まれてますが、難読
       につき現代においても「明日」~「丹」までの2句目と3句目は読み方が定まっ
       ていません。

       児(こ)らが名に かけの宜(よろ)しき 朝妻の
                     片山崖(ぎし)に 霞たなびく
    (10巻1818)

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