グレゴリオ暦と同じく旧暦でも1年を12ヶ月で数える。月の満ち欠け12サイクルを経ると、また同じ季節が巡ってくるからだ。ところが旧暦の1ヶ月は月の満ち欠けひと巡り=約29.53日。
29.53日×12ヶ月=約354日
365 日−354 日= 11日
365 日−354 日= 11日
そう、旧暦の1年は太陽の動きをもとにした太陽暦(365.2422日)の1年と比べて11日ほど短いのだ。このまま放置しておくと、こよみ上の月日と実際の季節がどんどんズレていき、1月が夏だったり秋だったりと、少々面倒なことになってしまう。
そこで旧暦では約3年に一度、「閏月(うるうづき)」と呼ばれる1ヶ月を加えて1年を13ヶ月とすることで、その誤差を調整している。毎年の不足分11日が3年たつと33日、つまり約1ヶ月となるため、これを加えて補完するという考え方だ。4年に1度、1日を加えるグレゴリオ暦と比較して、1年の長さがかなり大きく伸び縮みすることになり、旧暦のそれはかなりダイナミックな方法といえる。だが、どんぶり勘定的に見えて実はこれ、古代中国において緻密な天文計算にもとづいて導き出された非常に高度なシステムなのである。
太陽暦と旧暦では太陽と月というおのおの異なる天体の周期から導き出されたサイクルにもとづいているため、両者の間にズレが生じるのは当然だ。しかしこの2つのサイクルが19年ごとにほぼ完璧に同期することは、2000年以上前の中国ですでに発見されていた。
月の満ち欠け周期(より正確には29.530589日)つまり旧暦の1ヶ月と、季節が一巡する周期(より正確には365.24219日)つまり太陽暦の1年との最小公倍数(正確には最小公倍数に限りなく近い数字)が19年というわけだ。上図にあるとおり、太陽暦19年分と旧暦235ヶ月分はともに6939日。2つの異なるサイクルは同じ地点をスタートした後、6939日を経て再び元の地点で合流する(「メトン周期」と呼ばれる。メトンはこの周期を発見した古代ギリシャの天文学者の名。中国へはギリシャより伝えられたのか、中国独自に発見されたのかは定かでない)。
これはたとえばある年の冬至がちょうど旧暦のついたち=新月にあたるとしたら、次に再び冬至と新月が同じ日に重なるのは6939日後ということを意味している。6939日は旧暦12ヶ月×19サイクル+7ヶ月分にあたるから、19年間に7回の割合で閏月挿入を行えば太陽と月ふたつのダイヤルはカチッと合うことになる。こうして季節とのズレはほぼ完全に解消されるのだ。
月の満ち欠けにもとづいたこよみを「陰暦(いんれき)」または「太陰暦(たいいんれき)」ということはご存知だと思うが、旧暦は閏月によって太陰暦と太陽暦をうまい具合に同期させてズレを解消することから、正確には「太陰太陽暦(たいいんたいようれき)」と呼ばれる。
閏月は最近では2009年の旧暦5月と6月の間に挿入され、1年が13ヶ月となった。この場合、5月のあとの閏月であることから、挿入された余分の1ヶ月を「閏5月(うるうごがつ)」と呼ぶ。次回は2012年に閏3月が挿入される。
お気づきのとおり、閏月は1年の終わりに「13月」として付け足されるわけではなく、年によって挿入される場所が異なる。もちろんこれにも法則があるのだが、それは「二十四節気B」の項でみることにしよう。
ちなみに太陽暦とのズレをまったく考慮しない純粋太陰暦を採用しているのが、イスラーム圏で使用されているヒジュラ暦だ。ヒジュラ暦では季節に対するこよみ上の月日が毎年約11日ずつ前倒しにスライドしていき、一巡するまでに約33年(太陽暦の)かかる。ムスリムが日の出から日没まで断食しなければならないことで知られる「ラマダーン」とは、このヒジュラ暦の9番目の月のことをさしている。「ラマダーン」はムハンマドにクルアーンが最初に降った月とされ、イスラームの聖月である。


















