03. 公転と自転
◇月はもしや自転していない?
日本では古くから月の中にウサギが見えるといわれますが(カエルや女の子の姿など、国や民族によってさまざまなものが見えているようです)、月面のクレーターや地形の凹凸が描きだす濃淡模様はさながら美術作品のように私たちの想像力をかきたて、ずっと見ていても飽きないものです。
しかし考えてみると、昔から現在にいたるまで毎日毎日、月が同じ模様を見せているのは、この衛星がいつでも私たちのほうに同じ面を向けているからにほかなりません。
月は自転していないということでしょうか?
◇月の自転周期は公転周期と実は同じ
こたえはNO。月もほかの惑星同様、ちゃんと自転しています。ではなぜいつも同じ面を地球に向けているように見えるのでしょうか? それは月の自転周期が27.32日だから。そう、公転周期とピッタリ同じなんです。
月は地球の周囲をまわっているわけですが、実はこれをより厳密にいいあらわすと、「月と地球はお互いの共通重心をまわっている」ということになります。
共通重心の位置は地球の中心から月寄りに約4600kmずれたところにあり、実際には月と地球はこの重心のまわりをお互いに公転しあっています。ところが地球の半径は約6400kmですから共通重心は地球の内部にあるわけで、その結果、月が地球の周囲を公転しているように見えているというのが真相なのです。
◇長い年月の潮汐で自転と公転周期が同期
月は約46億年前の太陽系形成から約6200万年後に誕生(これが現在、最も可能性が高いとされる説)しましたが、以来、月と地球は共通重心をまわりあう運動により、互いに重力や慣性の力の影響を受けあい続けています。
潮の満ち引きはその最たる例。満ち引きなど天体のそうした力によって引き起こされる現象を潮汐(ちょうせき)作用といい、この潮汐の働きが長い年月の間に月の自転周期と公転周期に変化を与えて、ふたつの周期を完全に同期させたのです(参照:月と地球の距離)。
これにより、月が公転軌道を進むごとに月自身もまた同じ分だけ回転するため、月は地球につねに同じ面を見せることになりました。
したがって地球上にいる限り、私たちは月の裏側を見ることはできません。逆にもし月が自転していなかったなら、私たちは地球にいながら月の360度ぐるりを見ることができたでしょう。